この記事はMice Advent Calendar2018の1日目の記事です.
Mice Advent Calendar2018は,東京理科大学 Miceの部員が日替わりでブログを書いていくイベントです.(Mice Advent Calendar2017はこちら)
今年は,新入部員が初日を務めさせていただきます〜
明日から25日間ジーニアスでクレイジーな先輩方のブログをお楽しみください!
A)『これで私たち夫婦の記録は終りとします。これを読んで、馬鹿馬鹿しいと思う人は笑ってください。教訓になると思う人は、いい見せしめにして下さい。私自身は、ナオミに惚れているのですから、どう思われても仕方がありません。ナオミは今年二十三で私は三十七になります。』
B)『これで私たち夫婦の記録は終りとします。ナオミは今年二十三で私は三十七
になります。これを読んで、馬鹿馬鹿しいと思う人は笑ってください。教訓になると思う人は、いい見せしめにして下さい。私自身は、ナオミに惚れているのですから、どう思われても仕方がありません。』
C)『これで私たち夫婦の記録は終りとします。これを読んで、馬鹿馬鹿しいと思う人は笑ってください。教訓になると思う人は、いい見せしめにして下さい。ナオミは今年二十三で私は三十七になります。私自身は、ナオミに惚れているのですから、どう思われても仕方がありません。』
これは,『痴人の愛』/谷崎潤一郎の最後の一節です.
谷崎潤一郎は大正,昭和を生きた近年の小説家で,華麗で妖艶な作風で知られています.
物語の展開,言葉の巧みさはとても美しく,その美しさは呼吸のテンポを崩されるほどです.
『痴人の愛』の他に『細雪』『蓼食ふ虫』『卍』『妻に失恋した男』などの作品があり,中でも『痴人の愛』は個人的にオススメです.
普段,本を読まない人でも読みやすい作品ばかりですので,是非一度読んでみてください.
話を戻しましょう.
そうです.「A) B) C)本当の文章はどれでしょう」って話です.
(読んだことあるから答えわかるよ〜って人は都合悪いのであっちに行っててください☺️)
まずは,『痴人の愛』のあらすじを簡単に書いておきますね.
主人公・河合譲治による、7年前(足かけ8年前)から約5年間の回顧として書かれている。譲治とナオミの年齢は、物語開始時点で28歳と15歳である。
河合譲治は独身の電気技師である。質素で凡庸で、何の不平も不満もなく日々の仕事を勤めていて、真面目すぎるが故に会社では「君子」といわれていたほどの模範的なサラリーマンであった。
不思議な運命の巡り会わせで、彼は浅草のカフェでナオミという美少女に出会う。ナオミは混血児のような美しい容貌であったが、その頃は無口で沈んだところのある、あまり血色もよくない娘であった。ナオミを気に入った彼は彼女を引き取り、大森に洋館を借りて2人暮らしを始める。
稽古事をすることを約束させ、ゆくゆくはどこへ出ても恥ずかしくないレディーに仕立てたいと彼は計画していた。ところが彼の期待は次第に裏切られていった。彼が、頭も行儀も悪く、浪費家で飽きっぽいナオミの欠点を正そうとすると、ナオミは泣いたりすねたりして、結局のところは最後には彼のほうが謝ることになるのである。
そんなある日、彼が早く家に帰ってみると、玄関の前でナオミが若い男と立ち話をしているのにぶつかった。嫉妬の情にかられた彼はナオミに問いただすが否定される。しかし、ナオミが他にも何人もの男とねんごろなつきあいをしていることに気付き、本当に怒った彼はその男達との一切の付き合いを禁じ、ナオミを外出させないようにした。いったんナオミはおとなしくなったものの、また熊谷という男と密会していることが分かり、彼はとうとうナオミを追い出してしまう。
追い出してしまったものの、彼はナオミが恋しくて仕方がなくなる。無一文で出て行ったナオミを彼は心配でいてもたってもいられなくなったので、手を尽くして探してみると、ダンスホールで知り合った男性の家にとまり、豪華な服装をして遊び歩いていることを知る。これには彼もあきれ果ててしまった。
ナオミのことを忘れようとしている彼のところへ、ある日ふらっとナオミが現れた。荷物がまだ全部彼の家にあるので、それを取りに来たのだという。ナオミはそんなふうにして、ちょいちょい家にやってくるようになった。品物を取りに寄るというのが口実だが、なんとなくぐずぐずいる。日が経つにつれて、ナオミはますます美しくなってくる。あれほど欺かれていながらも、彼はナオミの肉体的な魅力には抵抗が出来ない。ナオミも自分の魅力が彼に与える力を充分に知っていて、次第に彼を虜にしてゆく。ついに彼はナオミに全面降伏をする。
会社を辞め、田舎の財産を売った金で横浜にナオミの希望通りの家を買い、2人は暮らすようになる。もう彼はナオミのすることに何も反対をしない。彼は、限りなく美しさがましてゆくナオミの肉体の、奴隷として生きていく。(Wikipedia より)
早速,どれが正解か考えていきましょう.
※ここからは,答えになるので自分で考えるぞ!という方はストップしてください
まずは,文法的におかしなところがないか探していきしょう.
接続詞や指示語に着目するのが定番ですね.
接続詞はなさそうなので,指示語の「これ」に着目してみます.
「これ」は基本的に直前にくる物を指します.
A)とC)は,「夫婦の日記」を指してることになり特に違和感はありません.
B)は,「年齢差」を指してることになりますね.
そうすると,『馬鹿馬鹿しいと思う人は笑ってください。』は「年齢差のある恋愛が馬鹿馬鹿しいと思う人は」という意味になり違和感はないと思います.
しかし,次の一文『教訓になると思う人は、いい見せしめにして下さい。』は「教訓」が指すものが存在しなくなってしまいます.
ゆえに,おそらくB)は本当の文章ではないでしょう.
他に指示語は無いので,次に移ります.
谷崎潤一郎の表現の癖から見ていくという手もありますが,よほどの谷崎ファンでない限り難しそうなので,あらすじをヒントとして見ていきます.
A)とC)の違いは,最後の二文の順序ですね.
小説において,最後の一文は強調したいことである場合が多いです.
最後の一文は,
A)だと,年齢に関して
C)だと,私の感情に関して
ですね.
あらすじを見た時にどちらを強調したいかですよね.
ここからは,センスで絞った方が早いかもです.
あらすじと見比べつつ,正解だと思うものを選んでみてください.
そろそろ正解いきましょう...
選びましたか...?
正解は....
A)『これで私たち夫婦の記録は終りとします。これを読んで、馬鹿馬鹿しいと思う人は笑ってください。教訓になると思う人は、いい見せしめにして下さい。私自身は、ナオミに惚れているのですから、どう思われても仕方がありません。ナオミは今年二十三で私は三十七になります。』
でした!
どうでしたか?
あらすじの後半で,ナオミの肉体について言及していることから,譲治はナオミの若い身体に惹かれていったことがわからなくもないかもしれないですね.
それがわかると,最後に年齢に関して書かれているA)が答えだとわかるかもしれません.
最後に....
この記事には嘘が3つ隠れています
全て見つけられましたか?
明日は,kubota.hさんの自己紹介です!
お楽しみに.
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